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Nov 9, 2022
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森美術館で開催された「地球がまわる音を聴く:パンデミック以降のウェルビーイング」を『鑑賞を鑑賞する』(後述)のチームメンバーと訪ね、終わった後に2時間以上お互いの感想を交わしグラレコしたことをせっかくだから文章化して残したいと思う。
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Dec 14, 2022 01:51 AM

コロナの時間軸を超えても不変的な何か

鑑賞感想の日ジュアライゼーション by 仲沢 実桜
鑑賞感想の日ジュアライゼーション by 仲沢 実桜
テーマとしてのパンデミックの主張の強さもあって、行く前に「デジタルやらハイブリッドやらの話やろ」と推測したけど、いい意味で全く裏切られた。コロナ禍後という短い時間軸についての議論ではなく、1000年以上渡っても普遍的な人間の生の本質とは何かを、今の激変している時代だからこそ再考させる意図が読み取れた。
具体的に落とし込むと、13ヶ月かかる油絵を書いたエレン・アルトフェスト、日常的な動きの繰り返しで非日常感の体験を追求する、清貧で小さ絵を描き続けたギド・ファン・デア・ウェルヴェ、生きることを芸術と昇華させた堀尾夫婦、新聞紙を日々塗りつぶしてきた金沢寿美。これらの芸術家たちが共通しているところは、目立たない日常の行いを長いスパンを渡って続けることで、精神世界を個から社会へ、有限から無限へ、対立から統一へ探究する旅の絵巻を私たちに見せてくれたことだと感じた。
展示風景 エレン・アルトフェスト
展示風景 エレン・アルトフェスト
展示風景 堀尾貞治
展示風景 堀尾貞治
金沢寿美 「新聞紙のドローイング」
金沢寿美 「新聞紙のドローイング」
一番好きな作品、モンティエン・ブンマーのアロカヤサラタイからも生のテーマ性を読み取った。ハーブとスパイスが入れてある金属箱が積み上げられた先に、巨大な肺のオブジェが吊るされているインスタレーション。中で立ち尽くし、ハーブの香りが自分の肺に入り込むのを感じながら、巨大な肺に敬意を捧げた。古代インドのサンスクリットで、プラーナという語は息吹を意味すると同時に、生命力とも示す。人間の生命力=息吹を絶え間なく生み出す複雑で精妙なオーガンである肺の前に、感謝の気持ちを奉らずにはいられない。
モンティエン・ブンマー 「自然の呼吸:アロカヤサラ」
モンティエン・ブンマー 「自然の呼吸:アロカヤサラ」
「自然の呼吸:アロカヤサラ」の中を覗き込む
「自然の呼吸:アロカヤサラ」の中を覗き込む
生の本質とは内なる精神の自己探求であり、それは外の世界がどう変わるのであろう変わらず、たった3年間のパンデミックの後も、我々は数千年続いた人類の歴史を生き続けるのであろう。

森美術館の来場者像から会場構成へ

飯山由貴のドメスティック・バイオレンス(DV)をテーマにした作品群について、チームメンバーはアートというよりドミュメンタリー・社会活動だと感じた話があった。そこから、この作品はなぜ森美術館に展示されるのかについて議論したところ、「複合文化施設である六本木ヒルズに位置され、かつ22時まで開いている森美術館は、他の美術館よりも一般客層(ここでは美術館や展覧会などにあまり興味がない方を示す)にとってアクセスしやすい性質がある。そのため一般客に向けて発信するアクティビティとしてとしてこの作品が位置付けられても良い。」という意見が出た。実際、会場には多様な客層がいた。
しかしそれだと、会場構成的に飯山由貴の作品群から、小泉明郎の催眠術がかけられる暗い展示室、青野文昭の破壊された物体で作り上げられた八木山橋までの動線が、怖い雰囲気を醸していて果たして一般客向けなのかという冗談まじりの疑問もあった。催眠の部屋は言わずもがな、『八木山橋』も、暗い照明配置の上、ところどころ人型のアウトラインが事故現場を想起させる。「パパ、ここ怖いよ」と半分泣きながら通る子供に、「怖いね、よしよし大丈夫だから」と慰める父親もいた。実際会場構成の方に意図をインタビューしたい気持ちになった。
小泉明郎 「グッド・マシーン バッド・マシーン」
小泉明郎 「グッド・マシーン バッド・マシーン」
展示風景 青野文昭
展示風景 青野文昭
そう言いながらも、今回だけではなく森美術館の展示はキュレーションが親切だという意見に全員が共感を覚えている。他の現代アートを扱う美術館と比べ、作者の経歴紹介だけではなく各々の作品に対する作者の思いが読み取れるキュレーションになっていて、アートに関してあまり知見がない方も楽しめるような展示が多かった。これも森美術館のキュレーターが多様な来場者像に対応するための配慮だと思うと色々と納得いった。

最後にちょっとした宣伝

ここで、なぜ同行者の方をチームメンバーと呼ぶのか、なぜ鑑賞経験をビジュライズかの説明したい。2022/11/18(金) − 11/21(月)まで東京大学本郷キャンパスで開催される東京大学制作展2022「Emulsion」で、仲沢さんがチームリーダーとなる『鑑賞を鑑賞する』作品にビジュライザーとして参加させいただく予定である。作品紹介を以下に載せていく。
本作品は、来場者が「東京大学制作展2022」の作品を鑑賞した経験を描き手となる「ビジュライザー」との対話をとおして語り、その対話のプロセスをダイナミックなビジュアル(文字・形・色彩)によって描いたものである。
語られた鑑賞経験は、そのままでは目に見える形では残らない。ビジュアルを見ながら対話することで、ビジュアルに触発された気づきが生まれうる。また、対話の後に残されたビジュアルを見ることによって、自身の鑑賞経験を振り返る契機にもなるだろう。 ※本作品のビジュアルは、展示会場ウェブサイトの双方で見ることができる。  また、展示会場でおこなわれるビジュアルを作るための対話体験に参加することもできる。  (対話体験は、事前に予約した者の参加を優先する。)"
そのため、本記事に掲載した感想の画像が、まさに展示期間に行われる鑑賞経験のビジュアライゼーションの練習の成果である。『鑑賞を鑑賞する』ワークショップに興味ある方、ぜひ来場していただいて一緒に体験してみましょう。
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“作为聊天的交换,为你创作一副画” 水空間がもたらす感覚と体験

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